
清兵衛と瓢箪
情報システム学科雨宮 徹 先生推薦
12歳の清兵衛は、瓢箪を加工し美しく仕上げることに熱中しているが、父親は常日頃から彼の趣味を苦々しく思っている。ある日、清兵衛が授業中に瓢箪をこっそり磨いているのを見つけた教師はそれを取り上げ、家に報告をしてしまう。激昂した父親は家に吊るしてあった彼の瓢箪をすべて叩き割ってしまう。教師に取り上げられることで残った唯一の瓢箪は、転々と人の手に渡り、最後にはとてつもない高値で引き取られていくのだが、そのことを清兵衛自身は知らない。そして今、彼は瓢箪のことを忘れ、絵を描くことに夢中になっている…
最初に読んだのは10代の頃だったのですが、30代になって生まれた息子に「清兵衛」と名付けようかと思ったほど、この作品は私の心を捉え続けて来ました。
何度読んでも、しみじみとした心持ちになるのですが、それは清兵衛に、創作物を通して人に認められたいという邪念が無く、ただ美しいものを生み出したいという欲求のみで生きているからでしょう。この清兵衛の潔さは、邪念にまみれがちなわれわれのあり方を見直させてくれる力を持っています。
10分もあれば読み終えることのできる短編です。
どうぞ一度手に取ってみてください。
請求記号・資料ID
- 大宮本館
- 913.6||S 91102262
- 梅田分館
- 913.6||S 97220724
- 枚方分館
- 080||I 98221146
「小僧の神様 他十篇」所収。
※大宮本館のみ「清兵衛と瓢箪・網走まで」新潮文庫刊 所収。